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入院46日目。

いざ退院が近づいてくると、喜びと共に不安が出てくる。果たして無事に日常生活に体を慣らしていくことが出来るのか。そんなことを考えながら、いつも過ごしている。それと同時に「退院したら、あそこに行こう、ここにも行こう」などとも考えているのだから人間は不思議です。

 

山田稔のエッセイ『楽しき逸脱ー桑原武夫』を読んでいて、入院中の私にタイムリーな文章が出てきたので少し書いておきたい。

 

山田さんが入院中の桑原武夫先生を訪ねた際、桑原さんの病院に対する持論を聞く場面。以下、引用する。

 

病院の中では、誰もが患者として平等になる。街のおっさんにたいしても、たとえばアインシュタインのような人に対しても、抗生物質なら抗生物質の効き目は同じである。偉い人や金持にはすこし余計に効くということはない。病院の中は、一種の社会主義社会なのである。

 

以上。

 

退院に不安を感じている私は、外界で資本主義の荒波にもまれるのが怖い、ということになる。まさにその通りだと感じた。もともと資本主義とは相性の悪い人間なのでしょうがないのかもしれない。

 

上述のエッセイには「エレメンタル・フード」なる未来的な完全食が登場する。これは私も少し前まで飲んでいた栄養剤「エレンタール」のことだと思われる。

 

『楽しき逸脱ー桑原武夫』は悲しさと滑稽さが絶妙に入り交じった秀逸なエッセイでした。入院中に読めたことが何よりも嬉しい。